開催日時:7月2日18:00-19:30[日本]/17:00-18:30[中国]
報告者:南京大学社会学院副教授・朱安新氏
報告テーマ:中国社会の研究手法――『現代中国の社会と行動原理ー関係・面子・権力』(翟学偉著、朱安新・小嶋華津子編訳、岩波書店、2019年)を題材に
討論者:小嶋華津子(慶應義塾大学法学部教授)
早田寛(慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程)
開催形態:オンライン会議(zoomミーティング)
中国社会の営みを理解するには、どのような分析枠組みが有効だろうか。さまざまな理論や方法を比較検討しながら、中国社会の行動原理を解き明かした翟学偉・南京大学社会学院教授による著書を題材に、編訳者であり、ご自身も中国と日本をフィールドに社会分析をしてきた朱安新氏に、中国社会の研究手法について語っていただいた。
朱氏によれば、改革開放と市場経済化を経て、中国では個人と国家の間の一元的な組織関係は変化し、個人と政治の関係は一党支配の統治によって、個人と市場の関係は多様な企業組織によって再編された。しかし、個人と社会との間に生ずるだろうと想定されていた中間組織は、疑似閉鎖的な人間関係、疑似血縁的な人間関係が維持されたことにより期待通りの発展を遂げず、「関係」と「面子」を重んじる文化は温存された。
ご自身のこれまでの人生経験と引きつけながら展開された朱氏の講演は大変興味深く、参加者に、社会学分野における中国との学術交流の可能性を示してくれたものと思う。
文責:小嶋華津子(慶應義塾大学)